神さまのブログ【完結】

ライトなラノベにエントリーしてみた新城館です。 なんとか完走。星空が文字列に見えちゃう人の話です。

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完治を知らされた開けの週から学校が始まった。



予定では土曜日に手術、日曜日退院ということなので、
医者には普通通り学校に行って問題無いとは言われた。

が、体は大事だしね!万全を期して学業に復帰します!

ということで月曜日はお休みすると決めた。
このことを、担任には前もって伝えておくべきだろう。

と思ったが吉日、というか吉時?
ホームルームが始まる前に伝えてしまうことにする。

教室に着くと、席にも座らず、荷物だけ置き、
颯爽と職員室に向かい、今週末に手術をすることと月曜日は休むことを伝えた。

僕の怪我の事自体は知っているため、すんなりと承諾してくれたものの、
完治の早さには驚いていたようだった。

伝えるべきことを伝えると、妙な達成感で今日はもうお終いな気がする。
まだホームルームすら始まってないけど。

ホームルームの時間が迫っている為か、やや閑散とした廊下をトボトボ進み、
既に帰りたくなっている気持ちを抑えて自分の席に座る。

まだ担任が来ていないためか、クラスメイト達は各所で雑談に耽っている。

少しして担任が教室に現れると、
各所に固まっていた様々なグループは蜘蛛の子を散らすように各々が席につき、
既に着席していた者は、顔を上げ担任を見やる。


冬休み明け初のホームルームだけあってか、退屈な話が続く。
参った、眠いわ。そう思って目を閉じる。
そのまま意識が消えかけたその刹那、肩を軽く数回叩かれた。

驚いて目を開くと、担任は相変わらず教卓の前で話を続けている。
担任じゃない?後ろ?
振り向くと、見覚えのある女子生徒がこちらを見ていた。

見覚えがあるのはクラスメイトだから当たり前。
そうではなく最近どこがであって会話をした気がする顔だ。


こう思うと、如何に普段、僕がクラスメイトと交流を図っていないかが分かる。
分かりたくはないが。

「あんた、目の手術するの?」

ん?なんで知ってるの?僕のファンなの?ストーカー?
なんて考えた後に、要点だけまとめた
言葉を返す。

「…なんで知ってんの?」

「さっき職員室いたし、そこで聞こえてきた」

「え?なんであんな時間に職員室に」

というか、この娘だれだっけ。

「べ、別にいいじゃん。関係ないでしょ」

なにそれ一方的い理不尽んん。

「こいつ、バイトしてんのバレて呼び出し食らったんだよ」

急に右の方から別の声が割り込む。

バイト?あーあのコンビニ店員か、思い出した。

しかし、割り込んできたこの男子生徒、見覚えがない。
というか、隣なのに見覚えないとか、どんだけなんだ僕。

「ちょっ、サエキ!勝手に言いふらすなし」

「というか、目の手術するんだろ?なにするんだ?別に普通に見えてそうじゃん」

「そんなズケズケ聞くないほうがいいって……」

「いいじゃんかよー、お前が聞き出したんだろ」

なんか聞かれた本人が置いてきぼり気味なんですけど。
まあ隠すほどのこともないので、ありのまま、わかり易い表現で伝える。 

「いや、矯正用の機械が目に入ってるから、それを外すんだよ」

二人が驚いたように目を見開く。

「いやいやいや!痛すぎだろそれ!!うわあああ!!」

サエキ(?)が目を押さえながら悲鳴のような声を上げた瞬間、
クラス中の視線が僕達に向けられる。

「お前ら、五月蝿い」

担任が静かにこちらを睨みつけていた。

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今日は定期検診の日。

恐らく最後の定期健診になるだろう。


今日はいつもにもまして人が多く感じる。
そのせいか、予め予約してたにもかかわらず、かれこれ30分ほど待ちぼうけだ。

「あなた、たまに見るわね、どこか悪いの?」

不意に後ろから声が聞こえる。

初めは自分のこととは思わずスルーしていると肩を叩かれ、
振り向くと再度同じ言葉を老婆からかけられた。

「は、はい…。目を少し……」

急に話しかけられたせいか、
妙におどおどとした調子になってしまったことを心の中で悔やみながら頷く。

「あら、まだ若いのに。勉強のしすぎかしらね?」

「いや、ちょっと事故で目を怪我して。完治するまで機械で補助してるんです」

「あら!じゃあ、あなたインプラント入れてるのね」

老婆の口からインプラントという言葉がすんなりと出てくることに驚いていると、
そんな事は気にするそぶりもなく話を続ける。

「ウチの息子も、昔インプラント矯正してたのよ。三年くらい前だったかしらね。
 でも結局良くならなくてね、生体義眼にしちゃったのよね」

ちょっとなんて事言うのこのばあさん…。
絶賛いまインプラント中なんですけどお?
あからさまに引きつった顔をしていると、そのおばあさんは笑いながら、さらに話し続ける。

「大丈夫大丈夫。じいさんばあさんになればもっと見えなくなるから。
 わたしもだいぶ眼が悪くなってしまってね。
 あなたがいつも同じ服じゃなかったら、同じ人かなんてわからなかったかもしれないわ」

ん?元気づけるに見せかけて、貶されてね?
というか元気づけれてもなくない?

うーん、元気なばあさんだな……。

「ナカムラさん。ナカムラさん。診察の準備が整いましたので5番診察室までお越しください」

呼び出しのアナウンスがなると、その元気なおばあさんが反応する。

「あら、やっとね。じゃあありがとね」

特になにもしてはいない僕にお礼をいうと、ばあさんは診察室に消えていった。

それから五分後くらいだろうか、僕も呼び出しを受け、3番診察室へと入った。

そこで、いつもの先生とのいつものやりとりの後、
両目の完治を告げられ、手術の日取りを決めた。

「完治、おめでとう。予定よりもだいぶ早かったね」

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彼女のブログが見えなくなってから、

数日が経った。

出かけたついでとか、
部屋の窓からなんとなくとか、
たまに見上げた空には星空が広がっていた。

その隙間には、たまに『あ』とか『が』とか断片的な文字が見えたりしたが、
内容までわかるようなものではなかった。
それも毎日ではなく、見えることの方が稀だ。

一度『キス』という文字が見えたときがあった。
断片にしか過ぎず、その文字にはなんの意味もないことはわかっている。
それでもその文字に密かにドキッとしたりした。

明日、定期健診がある。

そこでまもなくの完治が告げられ、
インプラントデバイスを外すことになるのだろう。
そうなれば、手術だ。

手術への恐怖は感じない。

ただ大切なモノを失ったような、空虚さだけが胸の中をぐるぐるとしていた。

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