神さまのブログ【完結】

ライトなラノベにエントリーしてみた新城館です。 なんとか完走。星空が文字列に見えちゃう人の話です。

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結局僕は丸一日眠り続け、明けた元日の昼過ぎに目が覚めたということらしい。


それだけ寝たおかげか、その日のうちに熱も下がり、体のだるさは消えていた。

治ったついでにその日のうちに夜の天体観測と洒落込もうとした時には、
さすがに母親にお叱りをうけた。


まあ、そうだよね。
むしろ止められなかったら傷つくレベル。僕は愛されていないのか!?
愛なんていらねぇよ。
といった病み上がりから開けて次の日。

今日は、晴天だった。
天気予報によれば、1日天気が崩れることはないとのことで、
絶好の天体観測となるて事だろう。


といっても僕が観測するものは、星ではなく、スイーツ(笑)なブログなのだけど。

来年は受験で忙しいのだろう、ただ二年生のこの時期は、特にする事もなく。
ゴロゴロとテレビをみていたら夕方を過ぎ、まもなく夜の帳が降りようとしていた。

あらかじめ母親には、今日こそ天体観測に行くと伝えてある。

あまりいい顔はしなかったが、
あまり趣味らしい趣味のなかった僕がここ最近ようやく見つけた趣味という事になっている為か、
渋々といった体で了承してくれた。

遅くなりすぎないといことは、再三くぎを刺された。

すっかり日も落ち、星空を望める程の時間帯だ。

さあいよいよ出かけようかというところで、
母親は薄着すぎると普段着ている上着の上にもう一枚着ろと、
いつの間にか僕のタンスから持ち出していたダウンジャケットを手渡す。

だけでは飽きたらず、母親のマフラーを着けろという。

うん、凄いピンク色。

「さすがにこの色はないわ」

「夜だし、誰もみてないよ。いいからつけなさい、寒いから」


放任主義な母親だが、やはり病み上がりということもあり、譲りそうもない。

ここは黙って従うほか無さそうだと諦め、
ジャケットの上にダウンを着込み、ピンクのマフラーを巻いて、家を後にした。



あったけぇ。マフラー凄い。


山の上公園までの坂道。
通い始めた頃は、この坂道で軽く息が上がっていた僕も、
何度も通う内にすっかり慣れ、息が上がることもなくなっていた。

その坂道が少しキツく、軽く息が上がっている病み上がりの今日だ。


ひさしぶりに小さな達成感を感じながら、山の上公園からの展望に辿り着く。


そこには、満天の星空が広がっていた。


本来そこに広がっているはずの星空が、相変わらずにそこにある。

何度もここに通っている間、そこにあり続けていたもの。
僕にとってはとても久し振りなもの。

一拍置いて、自分に起きた異変に気づく。
「な、なんで……」

そんなこと分かりきってる。

信じきれない現実から目を背けるように、目をこすり、再度星空を見上げた。


『     日       ね。
                 キ
     抱            がと
 本       救
        あり       ご      』


目の前に広がる星空の所々に断片的に文字が見える。

この断片から、正しく意味を見出すのは難しそうだ。
あり……がと……?
いやいや、行違うし。

この時僕は、
彼女のブログと断絶されたことを理解した。

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遠くに女の子の泣き声が聞こえる。

辺りに響く、モノが弾ける音、崩れる音、溶ける音の前でも、
そのか細い声は、僕の耳にはっきりと届いている。

僕を取り囲む不吉な音と、この世のものとは思えない熱気がグルグルと僕の周囲を練り歩くなか、
その女の子の声を頼りに、僕は歩き出す。

理由はわからない。
でも僕は彼女のもとにたどり着かなくてはならない。
泣いているその子を助けられるような気がしたからだ。

彼女が見つめたものは次々と燃え尽きていく。
人も物も自然も、彼女の目に映る全てのものは、
等しく燃え尽き、灰となって散ってゆく。

ここでは彼女の視界にはなにも残らない。
そのことに絶望して泣いているのだ。
彼女がここで求めるものは、決して手に入らない。

そんな彼女を救えるのは、
彼女の視界にいない僕だけだ。
 
彼女が求めていない僕だから、彼女を救える。
 

泣いている彼女を抱きしめると、太陽を抱きしめているような灼熱が体中を走る。

「大丈夫だよ。泣かないで」

理由などなく、使命感にも似た感情に突き動かされた僕を、
驚いたように彼女は僕を視界に収める。

その刹那、閃光が走り、眼球を蒸発させ、この状況を理解するよりも先に意識がシャットダウンする。


「ごめんなさい」


はっとして目が覚める。


先ほどまで感じていた、ジリジリと焼けただれたような感覚が、
ウソのように霧散していった。

あの事故の夢のようだったけれど、いつもとは対象が違っていたように思う。
ひどく曖昧で支離滅裂ではあるけれど、今まで見えていなかったことが見えたような気がした。

だんだんと薄れていく夢の記憶。
それと反比例するように明瞭になっていく意識。

見慣れた天井、僕の部屋だ。

軽く開かれた窓から通り抜ける風がカーテンを揺らしている。

徐に上体を起こすと、額から冷却シートが落ちた。
思えば今着ているパジャマは汗でびっしょりと濡れている。

「あら、起きたの?丁度いいじゃない。ほら着替え持ってきたから、着替えちゃいなさい。びしょびしょでしょ?」

手にパジャマと冷却シートの替えを持った母親が部屋に入ってくる。

「ありあと」

やはり病み上がりか、呂律が回っていない。
恥ずかしく感じながらも、差し出された替えのパジャマと冷却シートを受け取る。

「今日は天気が良かったからね、窓開けといたよ。熱で暑かったろうし、気持ちいいでしょ?」

真冬の風にしては、とても優しく涼やかな風が、熱で火照った体に心地よい。
声には出さず、頷きで答える。

その反応に優しく微笑むと、徐に開かれていた部屋の窓を閉めた。

「まああんまり冷やしても良くないから、もう閉めるよ。もうすぐ日も傾くしね」

もうそんな時間なのか。
一体どれほど眠っていたのだろう。

母親は、最後に着替えを促して、部屋を後にしようとする。

「あ、そうだ。あけましておめでとう」

思い出したようにそう告げると、母親は部屋を後にした。

え、寝てる間に年越したの?

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すっかり風邪を引いたらしい

何だかんだで昨日帰宅したのは、日付が変わりそうな頃だった。

冷えきった身体を暖めるように布団に潜り込んだのも効果がなかったようで、
翌朝目覚めた時には、僕の身体は激しく風邪であることを主張していた。

猛烈な熱が体中を煮えたぎらせ、
頭痛と関節痛が鼓動にあわせてドクドクと僕を苦しめる。

無視できないほどに強く主張する風邪の症状に、
体内で繰り広げられるミクロ決死圏は激戦を極めていることが感じられる。

「いつまで寝てるの!?」

突如ドアが開かれ、母親の声が頭を突き抜ける。
うるさい…。

すぐに息子の異変に気付いたらしい母親は、
風邪引いたのかとか、だから昨日あれほどとか、
いくつか言葉を投げかけたあと、慌ただしく階下に消えて行った。

眠れば楽になるだろうか。

灼熱に飲み込まれるように、ゆっくりと意識が遠のいていく。

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