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体調が悪い。

起き抜けに感じていた身体の違和感は、電車に乗る頃には不快感に変わり、
教室に着く頃には頭痛と目眩に変わった。

僕は基本的に注意力散漫で、一つの事柄に長時間耳を傾ける事が出来ない。

その反動だろうか、体調の悪さが一定を越えると、
ある一点の事しか耳に入らなくなる。

しかもそのターゲットを自分で選べないから厄介なのだ。

先程から、妙に斜め前に座るクラスメイトが、
その友人らしき他のクラスの男に熱心に話している会話が耳から離れない。

「今日変な夢見てさ!お前とお袋がIKEAで料理対決してるんだよ!俺が審査員ね」

「なにそれ意味わかんね」

ホント意味わかんね。
思わず声に出てしまいそうな気持ちを抑え、心の中でクラスメイトの友人に同意した。
妙にクリアに聞こえるそのどうでもいい夢の話は続く。

「お前が親子丼の素を取り出したところで」

そう言い掛けたところで始業のチャイムがなり、
クラスメイトは授業の準備を始め、
その友人は焦ったように教室を出て行った。

それと入れ違うように担任が現れ、授業を始める。

「では、124ページ。現代史の中でも大分最近の範囲だ」

その担任の声に、僕の耳はロックオンした。
体調はますます悪化し、より聴覚の幅が狭くなる。


「今日はオービタル同時多発テロについて。みんなも多分覚えてるだろ。
 オールワン・カタストロフとも呼ばれてるな」

「今から11年前の1月1日、新年を迎えると共に御披露目となった大型スペースポートでの大規模テロ事件だ」

「このテロの被害は、施設破壊による単純な人的被害だけではない大きな問題を残したんだが、
 今日は11月だから、出席番号11、それはなんだ?」


「そう、ケスラーシンドロームだな。ではこのケスラーシンドロームとは何だ?次は、日付で22番」


「なんだ、知らないのか?散々ニュースでやっていただろ?」

「宇宙空間に浮かぶゴミであるデブリが増えすぎてしまい、
 地球が宇宙から実質的に断絶されてしまうことだ。
 爆発テロによって飛散した瓦礫が他のスペースポートや、
 衛星などを巻き込んで大量のデブリを生み出してしまったんだな」



「まあ、その疑問が浮かぶのも仕方ないが、よく考えてみてほしい。
 宇宙では慣性の法則が働くから、基本的には動き出した物体は動き続ける。
 そんな状況で大量の瓦礫が宇宙空間に飛散してしまうんだ」

「永遠に大量の瓦礫が飛び交い、さらにそれぞれがぶつかり合い、
 細かい瓦礫になり、さらに飛散していく。
 しかもそれらが飛び交うスピードは収まることがない」

「そんなところでデブリ回収するなんて、マシンガンをぶっ放してるところに突入して、
 飛んでくるその弾を集めてくるようなものだ。
 とてもできるものじゃない」

「つまり今みんなが毎晩見ている星の中には沢山のゴミが含まれているんだ。
 もう昔みたいに星座を探すなんてことも難しくなってしまって、寂しくなってしまったよ」


「おっと、脱線してしまったな。
 その影響は11年たった今でも各地で起こっているんだ。
 この影響で業務縮小した会社はどこだ?」



耳から入る情報のクリアさで、
ダイレクトに無理矢理脳みそに書き込まれているような気がする。


意識が追いつかない。

そう感じた瞬間、鈍い音と共に僕の意識は暗転した。

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