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「大丈夫かー!もう少しの辛抱だぞ!」

遠くでだれかの声が聞こえる。

ただ辺りに響く、モノが弾ける音、崩れる音、溶ける音の前では微かなもので、
意識には殆ど残らない。


僕を取り囲む不吉な音と、この世のものとは思えない熱気がグルグルと僕の周囲を練り歩く。
太陽を抱きしめているような灼熱が体中を走る。


はじめは感じていた、色々なモノが焼ける匂いは、疾うに感じなくなり、
呼吸の度に感じる激痛のリズムが僕の意識を身体から押し出そうと躍起になる。


僕が助けなければ。
僕が何とかしなければ。


理由なく感じるその使命感に突き動かされたその刹那、
僕の視界に閃光が走り、眼球を蒸発させ、この状況を理解するよりも先に意識がシャットダウンする。


「ごめんなさい」


はっとして目が覚める。
カーテンに囲まれた、見慣れない天井。ただ何処かは分かる。保健室だ。


「起こしちゃって、ごめんなさいね。もう、最終下校時間も過ぎちゃってるから」


「あ、しゅいましぇん」


噛んだ。寝起きだし、仕方ないじゃんと開き直ることもできず軽く赤面していると、
保健の先生は微笑みかける。



「体調はどう?まだ悪いようなら、家に電話して迎えにきてもらうけど」


体調の悪かった僕は、結局授業中にぶっ倒れ、担任に運び込まれたらしい。
現代史の授業が二限目だったことを考えると、結構な時間をここで寝こけていた事になる。

それにしても久しぶりにあの夢をみた。
都心からやや離れた国道で、僕が巻き込まれた大事故。
後から聞いた話ではあるが、燃料輸送車両の爆発からの玉突き事故らしい。
国道沿いを自転車で走っていた僕の、突然の閃光とともに途絶えた記憶。
その後の断片的な曖昧な記憶。

事故直後はよくその夢を見た。

近頃はだいぶ見なくなっていたのだけど、
なぜまたこの夢を見たのだろう。

身体を起こすと、体中が軋む。
この身体の気だるさは寝過ぎたときに感じるものだろうか。
久しぶりに見た悪夢のせいだろうか。


「大丈夫です、ありがとうございました。自分で帰れます」

「そう?無理はしないでね」


保険の先生に挨拶をすると、保健室をでる。
日はすっかり落ちている。

最終下校時間もとっくに過ぎてしまったようで、校内には人気がなく怖いほどひっそりとしていた。

怖くなんかないもん。

走ると負けな気がしたので、競歩の如く早歩く。
後ろを振り向かず校舎を後にする。

開けた校庭から、夜空が目の前に広がる。



『ネコにゃんマヂかわぃい(*´Д`*)』



脱力とともに、安堵する。

落ち込んだキモチも、感じていた恐怖も、
バカらしく、どうでも良くなった。
 
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