神さまのブログ【完結】

ライトなラノベにエントリーしてみた新城館です。 なんとか完走。星空が文字列に見えちゃう人の話です。

2013年11月

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「大丈夫かー!もう少しの辛抱だぞ!」

遠くでだれかの声が聞こえる。

ただ辺りに響く、モノが弾ける音、崩れる音、溶ける音の前では微かなもので、
意識には殆ど残らない。


僕を取り囲む不吉な音と、この世のものとは思えない熱気がグルグルと僕の周囲を練り歩く。
太陽を抱きしめているような灼熱が体中を走る。


はじめは感じていた、色々なモノが焼ける匂いは、疾うに感じなくなり、
呼吸の度に感じる激痛のリズムが僕の意識を身体から押し出そうと躍起になる。


僕が助けなければ。
僕が何とかしなければ。


理由なく感じるその使命感に突き動かされたその刹那、
僕の視界に閃光が走り、眼球を蒸発させ、この状況を理解するよりも先に意識がシャットダウンする。


「ごめんなさい」


はっとして目が覚める。
カーテンに囲まれた、見慣れない天井。ただ何処かは分かる。保健室だ。


「起こしちゃって、ごめんなさいね。もう、最終下校時間も過ぎちゃってるから」


「あ、しゅいましぇん」


噛んだ。寝起きだし、仕方ないじゃんと開き直ることもできず軽く赤面していると、
保健の先生は微笑みかける。



「体調はどう?まだ悪いようなら、家に電話して迎えにきてもらうけど」


体調の悪かった僕は、結局授業中にぶっ倒れ、担任に運び込まれたらしい。
現代史の授業が二限目だったことを考えると、結構な時間をここで寝こけていた事になる。

それにしても久しぶりにあの夢をみた。
都心からやや離れた国道で、僕が巻き込まれた大事故。
後から聞いた話ではあるが、燃料輸送車両の爆発からの玉突き事故らしい。
国道沿いを自転車で走っていた僕の、突然の閃光とともに途絶えた記憶。
その後の断片的な曖昧な記憶。

事故直後はよくその夢を見た。

近頃はだいぶ見なくなっていたのだけど、
なぜまたこの夢を見たのだろう。

身体を起こすと、体中が軋む。
この身体の気だるさは寝過ぎたときに感じるものだろうか。
久しぶりに見た悪夢のせいだろうか。


「大丈夫です、ありがとうございました。自分で帰れます」

「そう?無理はしないでね」


保険の先生に挨拶をすると、保健室をでる。
日はすっかり落ちている。

最終下校時間もとっくに過ぎてしまったようで、校内には人気がなく怖いほどひっそりとしていた。

怖くなんかないもん。

走ると負けな気がしたので、競歩の如く早歩く。
後ろを振り向かず校舎を後にする。

開けた校庭から、夜空が目の前に広がる。



『ネコにゃんマヂかわぃい(*´Д`*)』



脱力とともに、安堵する。

落ち込んだキモチも、感じていた恐怖も、
バカらしく、どうでも良くなった。
 
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体調が悪い。

起き抜けに感じていた身体の違和感は、電車に乗る頃には不快感に変わり、
教室に着く頃には頭痛と目眩に変わった。

僕は基本的に注意力散漫で、一つの事柄に長時間耳を傾ける事が出来ない。

その反動だろうか、体調の悪さが一定を越えると、
ある一点の事しか耳に入らなくなる。

しかもそのターゲットを自分で選べないから厄介なのだ。

先程から、妙に斜め前に座るクラスメイトが、
その友人らしき他のクラスの男に熱心に話している会話が耳から離れない。

「今日変な夢見てさ!お前とお袋がIKEAで料理対決してるんだよ!俺が審査員ね」

「なにそれ意味わかんね」

ホント意味わかんね。
思わず声に出てしまいそうな気持ちを抑え、心の中でクラスメイトの友人に同意した。
妙にクリアに聞こえるそのどうでもいい夢の話は続く。

「お前が親子丼の素を取り出したところで」

そう言い掛けたところで始業のチャイムがなり、
クラスメイトは授業の準備を始め、
その友人は焦ったように教室を出て行った。

それと入れ違うように担任が現れ、授業を始める。

「では、124ページ。現代史の中でも大分最近の範囲だ」

その担任の声に、僕の耳はロックオンした。
体調はますます悪化し、より聴覚の幅が狭くなる。


「今日はオービタル同時多発テロについて。みんなも多分覚えてるだろ。
 オールワン・カタストロフとも呼ばれてるな」

「今から11年前の1月1日、新年を迎えると共に御披露目となった大型スペースポートでの大規模テロ事件だ」

「このテロの被害は、施設破壊による単純な人的被害だけではない大きな問題を残したんだが、
 今日は11月だから、出席番号11、それはなんだ?」


「そう、ケスラーシンドロームだな。ではこのケスラーシンドロームとは何だ?次は、日付で22番」


「なんだ、知らないのか?散々ニュースでやっていただろ?」

「宇宙空間に浮かぶゴミであるデブリが増えすぎてしまい、
 地球が宇宙から実質的に断絶されてしまうことだ。
 爆発テロによって飛散した瓦礫が他のスペースポートや、
 衛星などを巻き込んで大量のデブリを生み出してしまったんだな」



「まあ、その疑問が浮かぶのも仕方ないが、よく考えてみてほしい。
 宇宙では慣性の法則が働くから、基本的には動き出した物体は動き続ける。
 そんな状況で大量の瓦礫が宇宙空間に飛散してしまうんだ」

「永遠に大量の瓦礫が飛び交い、さらにそれぞれがぶつかり合い、
 細かい瓦礫になり、さらに飛散していく。
 しかもそれらが飛び交うスピードは収まることがない」

「そんなところでデブリ回収するなんて、マシンガンをぶっ放してるところに突入して、
 飛んでくるその弾を集めてくるようなものだ。
 とてもできるものじゃない」

「つまり今みんなが毎晩見ている星の中には沢山のゴミが含まれているんだ。
 もう昔みたいに星座を探すなんてことも難しくなってしまって、寂しくなってしまったよ」


「おっと、脱線してしまったな。
 その影響は11年たった今でも各地で起こっているんだ。
 この影響で業務縮小した会社はどこだ?」



耳から入る情報のクリアさで、
ダイレクトに無理矢理脳みそに書き込まれているような気がする。


意識が追いつかない。

そう感じた瞬間、鈍い音と共に僕の意識は暗転した。

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あれから3日程天気が晴れる事はなかった。

最終的には台風が通り過ぎ、温度はぐっと下がり、
本格的な秋の訪れを感じさせた。

そんな季節の変わり目に町中はどこか落ち着かない。

僕もご多分に漏れずどこか落ち着きを欠いていた。
ただその理由は世間とは全く違うものだ。


この3日間、あのブログはどうなっている。


そればかりが気がかりで、上の空で今日一日が終わっていった。

前までは、毎日見るような習慣はなかった。
特異な現象から眼を背けようとしていたこともあるだろうし、
天気的に連日星空が拝めるという機会があまりなかったのが大きかったと思う。

故に習慣にまでは発展しなかった。

ただここ最近の連日の晴れ模様で、窓を開ければ毎日眼に飛び込んでくる状況と
それをなんだかんだで見てしまったことで、
あのスイーツブログの半強制的な閲覧が、習慣となってしまったのだ。

習慣というのは恐ろしい。
3日程度途切れただけでこんなにも生活に支障をきたしてしまうものなのか。

正直あんな内容のないものにここまでハマってしまっている自分が信じられないとともに、
悔しい気持ちはあるものの、この際仕方がない。

それ程に、僕は今あのブログを求めている。


まだ日は落ちていないが、山の上公園で夜になるのを待つべきか。
しかしすっかり肌寒くなった今日は、長時間待機するにはやや厳しい。

近場の喫茶店で時間を潰そうと決め、下校の準備をする。


「おーい、日直係!こいつを運ぶのを手伝ってくれ!」


今の御時世には不釣り合いな、重厚長大な機械を軽く叩きながら、
担任が教室へ声をかけている。

ご愁傷様だな日直係。
僕じゃん。




この世のものとは思えない重さの機械を運ばされた挙句、
倉庫整理まで付き合わされ、汗だくのうちに開放されると、
外はすっかり夜の帳が降りていた。

疲れ果て、フラつきながら、校門から夜空を見上げる。


『お久しぶりぃ( -д』


まるで僕に話しかけているような文面に目を疑う。
どういうことなのか、今すぐ全文を確認しなくてはいけない。

習慣化したものが見れないというストレスと、
まったく無関係だと思っていたスイーツブログに自分のと繋がりが見えた高揚感で、
もはや冷静な判断はできず、僕は山の上公園へ走りだしていた。

もはや疲れなど感じない。
普段はトボトボとゆっくり登る公園までの坂道も、一気に駆け上がり、
達成感も感じぬまま、開けた夜空を一望する。


『お久しぶりぃ( -д-)ノ
 ちょっと落ち込んぢゃってたから更新できなかった
 カレに逢いたいって言っただけなのに、パパにちょー怒られた(´;ω;`)
 立場のチガイだってゎかるケド、このキモチにはウソっけなぃョ( p_q)エ-ン』


へたり込むように、その場に座りこむ。
高揚した気分は、一気に下がり、冷静さを取り戻していく。


「ははは、まあそうだよな」


たまたまブログが更新されず、不特定多数に向けたブログ再開の挨拶。
そんなこと少し考えればわかったはずなのに。

ただ、
また習慣を果たしたことでの不思議な充足感は確かに感じていた。


「よくわかんないけど、とりあえずパパに同情するよ」


相変わらずの文面に脱力しながら、確かな喜びを感じている僕が居た。

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「はじめっ」

担任の掛け声とともに、僕の机のモニターに問題が表示される。

見覚えのない数式が並んでいる。
もはや適当な答えすら記述しかねるレベルだ。

ラクガキでもして時間を潰したいところだが、
テスト問題には解答欄以外に筆跡を残すことはできない。

なんと残酷なシステムだろう。

ただ、提出さえしてしまえば、終了時間までは自習と称した自由時間だ。
世の中諦めが肝心だというではないか。
もう諦めて、提出ボタンを押す。

送信完了。

さて、と一呼吸おいたところで再度表示されるテスト問題と提出拒否の文字。

恐る恐る担任の方へ顔を上げると、まっすぐにこちらを見つめている。
表情こそいつも通りの無表情だが、眼には明らかな怒気が見て取れる。
逃げ道はない。
 
諦めて、再度問題を見つめる。

横目に窓から外を見ると、明らかな曇天だ。
天気予報によれば、今日は全国的に天気が崩れるということだ。

まだ雨こそ降っていないが、時間の問題だろう。
などと考えている間に、教室に音が聞こえるほどの大雨が降り始めた。

その音に反応するように、クラスの3割程度が一斉に窓の方を見遣る。

「余所見をするなー」




一日の授業をなんとなくやり過ごしての放課後。
相変わらず大雨は続いている。

今日は、星空は拝めないだろう。
正確には、スイーツブログだが。

星空自体は随分長い間拝めていない。

まあ、今日はあのスイーツに振り回されることはない。
寝るまでの時間を有意義に使わせてもらうとする。

帰りに本屋にでもよって帰ろう。
今日は色々と漫画の新刊が出るはずだ。




夕食を済ませ、やや早めの風呂を済ます。
いそいそと自室へ戻り、今日買った新刊を楽しむのだ。

もくもくと読み進めるも、
楽しみにしていた話の続きのはずだが、どうも頭に入ってこない。

どうも集中できていない気がする。

なぜだ。
頭に浮かぶのは、あの事。

スイーツブログには、今日はどんな内容が書かれているのだろう。
どうせなんにも中身の無い、どうでもいいことが書いてあるに違いない。

でももしかしたら、
今日に限ってなにかすごいことが書いてあったりするのではないか?

もしかしたら、
この怪現象のヒントが書かれたりするのではないか?


なぜ僕の眼にだけ映るのか、それにまつわることだって書いてあるかもしれないじゃないか。
直接的でないにしろ、間接的な、原因のきっかけが見つかるかも。
そんな記事を見逃しているのではないか。

気になりだすと、止まらない。

明日の天気は晴れなのか?
おもむろに天気予報を検索する。

相変わらずずらりと並ぶ雨のマーク。
なんだか焦りに似た感覚が、僕を襲う。

関東圏内から引いた、全国の予報を表示する。

東京より北部、仙台周辺には雨マークは無い。
曇時々晴れ。
夜には雲が晴れるとある。

一番近い仙台周辺の県は、福島か。
新幹線を使うレベルの距離だ。
片道の料金は……8000円といったところだろうか。

二時間程度の道のりだ。
放課後からでも急げば、行って帰ってこれる距離だ。

そこまで考えてハッとする。

なに考えてるんだ。
あんなものを見るために往復で4時間の二万円の日帰り旅行って。
どうかしてる。

こんな時はさっさと寝てしまうに限る。
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夕食を済ませ、特にすることもない土曜日の夜。

こんな時こそ、授業の復習と予習を済ますべきなのだろうが、そんな気はさらさらない。

積ん読状態のSF小説でも消化しようと、積み上げられた文庫に手を伸ばす。

取り上げた拍子に積み上げられた文庫本が雪崩を起こし、
それに乗って星座早見表が滑り出してくる。

懐かしい。
幼稚園児の頃だろうか、よく父親と星座を見に行った気がする。

たとえまだ星座が見えたとしても、
今の僕の眼には、脳天気なブログに見えてしまうのだろうが。

もはや慣れては来たが、納得はいっていない。
これからどうなるのだろう。


徐に窓を眺める。
今日はどんな内容が夜の空に広がっているのだろうか。


窓開けてみるだけなら、大した手間ではない。
どうせ暇だし。

カーテンと窓を開け放し、残暑の夜風が部屋に流れ込む。


『もしユメ』


ん?暗号? ではない。

うちの家は、一軒家であり、高さがない。
そのため他の建物に阻まれ、見える星空は限られているのだ。
よって我が家からは夜空のスイーツ(笑)ブログの全貌を把握することはできない。

いや、さすがにね。
しょーもないと分かってるものを見るためにね。
貴重な土曜日の夜を浪費してもね。

いや、まあすることなくて既に浪費してるんだけど。


『もしユメ』?
なにそれ。
もし?if?
ユメ?dream?

いやいや、気になってないし。
本でも読むし。




運動不足の僕にはやや辛い坂道を地道に登る。
今日はやや湿度が高く、歩けば歩くほど蒸してくる。

謎の好奇心に負けた自分が憎い。

たまに吹く風の心地よさだけを頼りに坂道を進んでゆく。


小さな達成感を感じると同時に、山の上公園の展望が開ける。


『もしユメが叶うなら、愛しのあの人にチョコクロあーんってしてあげたぃょ(●´ω`●)
誰が叶えるんだっつーの(ノ`Д´)ノ はぁ……』
「相変わらずどーでもいいな……」

てか自分でツッコむなよ。
そして俺の貴重な土曜日の夜を返せ。

割りと予想通りの内容なのが、余計辛いし。
かといってどんな内容を期待していたんだろう。

やり場のない気持ちをヤキモキしながら、蒸し暑い家路についた。 

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