神さまのブログ【完結】

ライトなラノベにエントリーしてみた新城館です。 なんとか完走。星空が文字列に見えちゃう人の話です。

2013年11月

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相変わらず暑い日が続いている。

湿度は大分下がり、カラッとした暑さなのが唯一の救いだ。

今日は月に一度の検診の日だ。

「久し振りだね。どうだい調子は?」

僕の担当医は、相変わらずの愛想の良さで微笑んでいる。

「まあ、特に変わりは無いです」

僕は曖昧に返事を返すと、促されるままベッドに仰向けに横たわる。
医者は慣れた手つきで、僕の肩から腕にかけてなにやら動きを確かめながら、雑談を続ける。
なんだか手持ち無沙汰で腕をグニグニされてるだけなんじゃないかという気がしてくる。

「まあ、腕と肩に関しては、もう完治したようなもんだね。違和感はまだある?」

「若干。腕を高く上げたときくらいです」

「それくらいなら大丈夫だね。先生なんて四十肩で、腕なんか上がらないし」

医者と比較されても大丈夫な理由にはならないとは思いつつも、
僕はなんとない愛想笑いを浮かべる。

「まあ、それよりも眼だよね。インプラントの調子はどう?」

そう言いながら、アイマスクのような機械で目元を覆われ、僕の視界が暗闇に包まれる。

「うん。矯正値は下がってきてるから、だんだん回復はしてきてるね。
 とりあえず順調って感じかな」

僕の視界を覆っていた機械が外され、蛍光灯の急な光に目を細める。

「いつ頃治るんですか?」


僕は半年前に聞いた質問を久し振りに投げかけた。


「うーん、あと二年は掛かかるかな」


「相変わらず時間掛かるんですね」

「これでも早い方だよ。
 むしろインプラントデバイス使っても、見えてる事が奇跡みたいなものだよ。
 事故直後のキミの眼はほとんど原型をとどめていなかったんだから」
 
奇跡。
あの事故から生還して以来、よく言われる言葉だ。
視力どころか、生きていることさえ奇跡的だとあの頃は言われた。
それは理解しているつもりなのだが、
如何せん今視力という点で不自由が無いことが、しているつもりの理解を邪魔する。
そこに二年以上の治療の話をされてもピンと来ない。
 
「当時のキミの眼はほとんどの機能をインプラントで肩代わりしていたんだ。
 眼をリハビリするように少しずつその補助を外していき、
 今では視神経の機能と結晶体の調整以外は、キミの眼自身の力で機能してるんだ。
 これは大きな違いだよ」
 
そう考えると、確実に治ってはいる。
だがしかし、だがしかしだ。
インプラント手術をしてから、僕の星空は侵食されだしたのだ。 
あと二年、もしくはそれ以上の間、
僕は毎晩あのスイーツブログと付き合って行かなければならないのだろうか。
正直それはキツイ。
 
「なんだか、浮かない顔だね。まさかまだアレが見えるとか?」

「……はい。まだ文字に見えますね」

「うーん、機械には不具合は無いはずなんだけどな…。他の使ってる人から同様の報告も無いし」

「まあ、ですよね」
 
とりあえずひと通りの検診を終え、帰り支度を始める。
帰り際に医者からは、なにか心当たりがあれば、相談してくれと言われたが、
どこの世界に夜空がスイーツブログに見える心あたりがあるというのだろうか。

病院を出る頃には、日も落ちかけていた。
 
暮れ泥む光と影のバランスが妙にドラマチックな町並みを眺め、
こんな景色が見れなくなるかもしれなかったと思うと、現代医療に感謝せざるを得ない。

せっかく街まで出てきたのだ。
チョコクロワッサンで小腹を満たして帰ろう。 

さて、今夜もブログは更新されるのだろうか。

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僕の眼には、星空が文字列に見える。

星の一つ一つがランダムな文字となり、空に散らばっている訳ではない。

ちゃんと一つの文章として、整列し、成立しているものとして見えるのだ。

その文字列が、苦手な英語の参考書とかであったならば僕の英語力も向上し、
僕の将来にはインターナショナルな明るい人生ライフが待っていた事だろう。

……いや、その前にノイローゼになるわ。そっちの方が無理っぽい。

もちろん僕の目に映る星空は、参考書などではなく、世間を知れる新聞でもなく、
タメになる小説でもなければ、ましてやマンガでもない。


ブログだ。

いやおそらくブログなんだと思う。
しかもかなりスイーツ(笑)な内容だ。
 

黒地の空に星の光で書かれているその文字列は、
毎晩書き換わり、
今日も僕の夜空を浸食する。
 

『今日ゎ噂のあっぷるパイもらっちゃいましたぁ★ 
 はっ!Σ(=゚ω゚=;)ワタシ食べてばっかり?!』

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季節は夏。

未だ茹だるような暑さが続く9月中旬。

そんな残暑の只中であっても、完全に日が落ちてしまえば、
心地良い涼風が抜けてゆき、木々の声がそれを演出する。

今日はまさに晴天だった。
この森を抜ければ、本来は満天の星空が広がっていることだろう。

懐中電灯の光を頼りに、運動不足にはやや辛い坂道を登り終えた僕は、
小さな達成感を感じながら、目の前に広がる夜景を眺める。



『今日ゎ、チョコクロワッサン食べたョ(*´Д`*)』


目の前に広がるのは星海ではなく、妙にキャピついた字面だ。
あの日以来、これが僕の目に映る星空だった。

「どーでもいいわ」

誰にでもない呟きが、虚しく夜空に響いた。

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