神さまのブログ【完結】

ライトなラノベにエントリーしてみた新城館です。 なんとか完走。星空が文字列に見えちゃう人の話です。

2013年12月

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「今日は全国的に曇り空が広がり、一日中、不安定な天気が続くでしょう。
 一部地域では雨の可能性もあるので、折り畳み傘を持っていると安心かもしれません」

お天気お姉さんの言うとおり、
朝からチラついていた雲は、昼になっても晴れることはなく、
より一層濃くなっているように感じる。

まだ雨こそ降っていないものの、あと二時間後に雨だといわれれば納得できるような空模様だ。



授業を終え、放課後を通り過ぎ、帰宅しても、結局雨が降ることはなかった。

ただ空模様は回復することはなく、夜の帳が降りた後でも、相変わらずの曇り空だ。
徐に部屋の窓から夜空を眺める。


『テラキドー』


建物間の中の雲間に謎の言葉が見えた。

なんだよテラキドーって。
まあ、とりあえず観に行くか……。

コートとマフラーを着込み、玄関に向かうさなか、母親に呼び止められる。

「ちょっとちょっと。こんな時間にいつも何しに行ってるの?」

まあ確かにそうだよね。
むしろ何故今まで放置してたし。

相変わらずの放任主義だ。

「星を観に行くんだよ」
まあ、嘘ではない。

「あれ、星なんか興味あったの?言ってくれれば望遠鏡あるのに」

「そうなの?じゃあ貸してよ」
まあ、別に使わないんだけれど。

「そんな急にいわれても無いよ。
お父さんのだし。探しとくよ」

「あっそ。じゃあ見つかったら貸してね」
そう言うと、玄関を開け外に出た。

寒いな。
締めかけたドアの隙間から、風邪引く前に帰りなさい的な忠告が聞こえた。
はいはい、わかってますよーっと。


寒さで軋む体に鞭打ち、山の上公園に辿り着く。


『今日ゎ         ラブラしてきたョ(
 カ      るんだけど、やっぱゴミだらけだったな。
 自       をつぶしちゃったんだね……(´;
 このお陰         えられてるけど、素直に喜       』


案の定、チラつく雲で断片的な文字しか確認ができない。
とてもじゃないが、読めたものではない。

どうするべきか。
ただ待つにしても、今日は風が強いわけではなく、雲の流れも非常にゆっくりだ。

だいぶ体も冷えてきてしまっている。
 
一旦コンビニで肉まんでも買ってこようか。
戻ってくる頃には、雲に動きがあるかもしれない。

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『金魚鉢にネコにゃん一杯入ってる写真みつけた!!

 どーゅぅことなの?ネコにゃんは液体なの?
 カンペキに溶け合っちゃってるョこれ?!
 すごぃ!ちょーかわぃい!ヾ(´ω`=´ω`)ノ』

たしかに軟体動物かってくらいグニャグニャなときある。


『ネコにゃん持ち上げてる写真!!(☆゚∀゚)
 ちょ、すごぃ!伸びすぎだョ!!ヘビさんの親戚かなにかなの?!(((( ;゚д゚)))』


さすがに爬虫類との血族説はどうかと思うわ。可愛さから遠のくし。


『ネコにゃー自分の顔蹴飛ばして、怒って自分の足に噛みついてる動画!!(゚∀゚)
 バカすぎ!バカかわぃいぃ〜(´∀`*)』

君も割りとバカかわいい系だと思う。


といった具合に連日続く猫ネタで、
もはやスイーツブログというよりも猫ブログの様相を呈してきた昨今。

彼女をこんな猫ブームに放り込んだのはだれだ。
僕も猫は好きだが、こうも連日だと少し心配になる。

……しかし、
ブログにいちいちツッコミを入れている今の自分の方を心配すべきかもしれない。


さらに俯瞰すれば、
真冬の夜、誰もいない公園で、空に向かってブツブツと何か呟いている、
この状況は不審者そのものだ。


しかもその顔は、満足げに微笑んでいると来たもんだ。

早く何とかしないと……。

己を顧みるように夜空を仰ぐ。
 

『ネ にゃー自分の  飛ばして、怒って  分の足に噛みつ
バ   ぎ!バ     ぃいぃ〜』


目がかすむ。断片的に抜け落ちる文字列。

「っくしゅっくしゅんっ」


身体の芯から凍りつくような感覚を思い出す。

寒い。
寒すぎだろ。

もう、帰ろう。

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世の中はクリスマスムードも最高潮といった様子で、
街はイルミネーションとカップルで溢れかえっている。

そんな街に居心地の悪さを感じる僕はといえば、人通りを避けながら、街を後にする。

恐らく今日の彼女は、さぞクリスマスというイベントに浮かれたブログを書いている事だろう。

誰に見せるでもない、やれやれという様子を浮かべながらも、
そのクリスマスブログさえ楽しみにしている自分がいた。

コンビニで買ったチョコまんを頬張りながら、いつもの坂道を登る。

決してささやかなクリスマス気分という訳ではない。
寒いから、暖まりたいから食べているにすぎない。

今日だけチョコまんを選択したのは、偶然だ。

ちょうどホカホカのチョコまんを食べ終わり、体の内側からポカポカとし出したのに、
心はどこか寒いなと感じた頃に、坂道を登り終えた。

『メリー・クリスマス!!.。゚+.(・∀・)゚+.゚
 …といっても、ゎたしには、クリスマスの習慣なぃんだケド(´・ω・`)
 でも大切な人と過ごす日なんだよね?
 もしカレと過ごせるなら毎日でもクリスマスしたぃな(´;ω;`)』

いつもの展望には、いつもの彼女の駄文が広がっていた。

しかし、クリスマスの習慣が無いというのが、意外だった。

ギャル語じみたある種高度な日本語を使いこなしているため、
日本人であることを疑わなかったが、どこか別の国の人なのだろうか。

それとも日本人でも、仏教徒とか宗教にこだわりのある家庭で育っていたりするのだろうか。

しかしたまに出てくる「カレ」という存在。
度々出てくるものの、一緒に過ごしたというものではなく、過ごしたいという内容のものばかりだ。

これは、いわゆるカレシ的な存在ではなく、片想いということなのだろう。

僕は、今のところ片想いをしている女性は居ないが、
こういった時に一緒に過ごす大切な人が居ないという点では、
非常にシンパシーを感じる。

この真冬の寒空の下、僕は一人じゃないというようなことをなんとなく感じ、
僕なんかにこんなことを言われても、なんの救いにもならないけれど、
少なくとも世界中で最低でも一人は、キミの日々の記録を見ているし、
なんなら楽しみにしているのだということが、少しでも彼女の心の隙間を埋められたらと思う。

でも、この気持ちを伝えることはできない、術がない。

彼女の願いの一部分だけでも叶うことを、見えない星空に祈りながら、
僕は家路についた。

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12月も中頃を過ぎ、外に出ようものなら、すっかり冬本番といった気温に体を縮こませ、
凍てつく風につい視線を地面に落とす。


「今日は今年一番の冷え込みとなるでしょう」

お天気お姉さんの言葉通り、今日の寒さは間違いなく今年一番の冷え込みだ。

お姉さんの言葉を甘くみていた僕は、奥歯をガタガタ言わせながら病院までの道程を進んでいく。

今日は開校記念日で、学校は休みだ。
そのため、お昼頃の暖かい時間を狙って外出したにも関わらず、この寒さ。
夜ともなれば、それこそ極寒となり、奥歯をかみ砕く勢いだろう。

早いところ定期検診を済ませ、日が落ちる前に帰宅してしまおう。

前々から決まっていた月に一度の検診とは言え、
こんな極寒の日にサボリもせず律儀に向かうあたり、真面目というか自分らしいというか。




こんなに寒い日だというのに、病院は満員御礼といった混み具合で、待合室には人があふれている。
スーツ姿の人がチラホラと混じっているあたり、昼休みを使い検診にきている患者も多そうだ。


僕はといえば、定期検診で既に予約済みなので、
その混雑を後目に特に待つこともなく診察室へ向かう。



「久し振りだね。どうだい調子は?」

いつも通りの挨拶と笑顔。

胡散臭ささえ感じるほどの愛想の良さを振りまく、僕の担当医がいつもの場所で出迎える。

「すごく寒かったです」


「今年一番の寒さみたいだね。ちょっと薄着なんじゃないかな?体調管理はしっかりね」


そう言いながら僕に微笑みかけ、ベットへ横たわるように促す。

促されるままいつも通り仰向けに横たわる。

「肩と腕は、もう大丈夫だよね。視力矯正の確認だけして、終わりにしよう」

そう言うと、いつものアイマスク状の機械が僕の視界を覆う。


「うん、順調に回復してるね。
 前回より大分補正値が下がってるみたいだし、予定よりも早く完治するかもしれないね」


完治。
そうか今僕の眼は、異常なのだ。
いずれ近いうちに僕の目は正常に戻り、普通になるのだ。
その事をすっかり忘れていた。

この間までは、この眼の異常が迷惑以外のナニモノでもなかった。

でも今、僕はこの異常を、文字列に見えてしまう夜空を、
受け入れ、日常とし、習慣とした。


それが失われようとしていることを理解した。

「あれ、なんだか嬉しそうじゃないね?
 前はいつ完治するのかを、とても気にしていたようだったけど」


「いえ、そんな事は。嬉しくはありますけど、あまり実感なくて」

実感の無いことは事実ではあるが、嬉しくは無い。
失われつつあるものに動揺しているのだ。


「そっか。そう言えば、まだ見えてるのかな?文字列」

話を逸らしつつも、近い話題をふられる。
その問いに曖昧に答えると、医者はカルテを眺めながら、話を続ける。


「結構前に心当たりを聞いたよね?
 それが無いってことは、精神的な影響による幻覚みたいなものは、
 とりあえず無いと思うんだ」

そう言いながら、一人うなずき、
ただそれに嘘が無ければという旨を付け足し、僕に向き直り微笑みかける。

僕は眉をひそめ、曖昧に頷く。

医者は、笑顔で頷くとまたカルテに眼を戻す。

「それで、しばらく考えてみたんだけど、キミに見えているというその文字列は、
 神様からのメッセージなんじゃないかって思うんだよね」


「へ?」

思わぬスピリチュアル発言に耳を疑う。
この医者は、そんな感じのことをさもあたりまえのことのようにさらりと言ってのけるような、
ややイタい、否、結構イタい発言をする人間だったのか。

「あ、今僕のことをイタいやつだと思ったね。まあその気持もわかる。
 じゃあ、神様を宇宙人とか。そういった人智を超えた存在に置き換えても構わないよ?」

置き換えたところで、イタい奴のレッテルは剥がれない。
といった顔をしていると、とりあえずといった感じで医者は話を続ける。

「まあ聞いてくれよ。
 肉眼で確認できる星の明るさを等星といって、
 一般的には第1等星から第6等星が人の視認できる限界ってことになってるんだけど、
 人によっては第7等星、第8等星と本来は視認できない星が見える人がいるんだ。
 その他にも、人の眼で見えない波長の光を不可視光線といい、
 有名なところだと、紫外線や赤外線はこれに当たるんだ。
 人では視認できる人は聞いたことがないけど、
 昆虫や鳥などは見えているものもいるそうだよ」



「なにが言いたいんですか」

「つまり、普通の人には見えないけれど、
 特殊な眼を持つものにしか見えない光ってのが存在するって話だよ」



「しかも11年前のオールワンカタストロフ以降、
 地球の周りには分厚いデブリの層ができているからね。

 その一個一個が星の要領で光っているならば、
 その光を操作すれば特定の人間にしか視認できない文字くらい、

 いくらでも浮かび上がらせることができそうだなって考えたんだ」

ここまで聞いたところでも、突拍子もない話という点では変わりはないが、
呆れという感情から、驚きの感情に変わりつつあった。

ただなぜそんな宇宙規模の小細工でメッセージを伝えようとするのか。

ましてやあんな中身の無いスイーツブログをだ。


そもそもそんな真似誰ができるというのだ。


「…面白い話ですけど、デブリ一個一個に当たる光を操作して、文字にするって、
 そんな事誰にできるっていうんですか」

「だから神様だって言ったじゃないか」

いつもの愛想の良い笑顔で僕に言い放つ。



間違っているのはわかっている。
でもここまではっきり言われると返す言葉もない。

落とし所は、突拍子もなく、言い返す以前の問題だ。
過程に関して言えば、事例を元にした感じの、
知識のない自分にとっては、なんだか妙に説得力のある内容だ。


あとSFぽくて、ちょっとおもしろい。
すこし不思議! いや、すげー不思議!
とはいえ……。


「なんてね。面白いだろ?これでも昔は作家になりたかったんだよ。
 さて、検診終了。来月来の検診日は、精算の時に受付の人と決めておいてね」

僕がポカンとしていると、医者は冗談めかして話を切り上げた。



神様?
馬鹿らしい。
あのスイーツブログがそんな高尚なものの筈がない。


医者の考察という名の創作を、
心のなかで何度も反芻し、何度も否定しながら家路についた。

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『ネコにゃんマヂかわぃい(*´Д`*)
 モッフモフでやわらかそーな体ナデナデしたぃ(*゚∀゚)っ
 プニプニにくきゅー連打したぃよぉ(ノ`Д´)ノ
 ぃつかホンモノのネコにゃんにさわれるかなぁ…』


僕の街と夜空を一望できるの特等席、
山の上公園から眺める、彼女の妙に浮ついた駄文は今日も健在で、
僕の望むものがそこには広がっていた。

ネコにゃんに対する狂おしい想いが感じ取れるものではあるが、
最後の一文が引っかかった。


『ぃつかホンモノのネコにゃんにさわれるかなぁ…』


まさか猫をさわったことないのか?

こんなに大好きみたいな文章を垂れ流しておいて?

考えられる理由は3つ。

1つ、実はそんなに好きじゃない。
2つ、極度のアレルギー。
3つ、諸事情でそもそも遭遇したことがない。

1つ目は違うな。
同じバカでも、彼女は嘘で媚び売るようなバカでは無い。…そうだよね?

3つ目も考えにくい。
軟禁レベルの箱入り娘でもない限り、猫に遭遇しないというのは難しい気がする。


となれば2つ目、アレルギーである線が有力だろう。
近づくだけで涙を流し、クシャミが止まらなくなる人は居る。
彼女もその部類なのだろう。


しかし、クシャミくらいで情けない。
一度くらい無理してでもさわってみろと言いたい。

それだけの価値が猫にはある。


猫なめんな!
とか無責任な事言っていると、

アレルギーなめんな!
とか言われるのだろう。

アレルギーで死ぬ人も居ると言うし。


でも猫のアレルギーで死ぬ人なんているのだろうか。
いくら猫好きでも流石に命懸けちゃうのはどうかと思う。


そういう意味では、彼女には己の距離感で猫を愛でてほしいと思う。


「っくしゅん!」


クシャミで我に返る。
駄文に影響されたのか、どうでもいい脱線考察を脳内で繰り広げていることに気づく。

そろそろ寒くなってきた。


風邪を引く前に帰るべきだろう。

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