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今日は定期検診の日。

恐らく最後の定期健診になるだろう。


今日はいつもにもまして人が多く感じる。
そのせいか、予め予約してたにもかかわらず、かれこれ30分ほど待ちぼうけだ。

「あなた、たまに見るわね、どこか悪いの?」

不意に後ろから声が聞こえる。

初めは自分のこととは思わずスルーしていると肩を叩かれ、
振り向くと再度同じ言葉を老婆からかけられた。

「は、はい…。目を少し……」

急に話しかけられたせいか、
妙におどおどとした調子になってしまったことを心の中で悔やみながら頷く。

「あら、まだ若いのに。勉強のしすぎかしらね?」

「いや、ちょっと事故で目を怪我して。完治するまで機械で補助してるんです」

「あら!じゃあ、あなたインプラント入れてるのね」

老婆の口からインプラントという言葉がすんなりと出てくることに驚いていると、
そんな事は気にするそぶりもなく話を続ける。

「ウチの息子も、昔インプラント矯正してたのよ。三年くらい前だったかしらね。
 でも結局良くならなくてね、生体義眼にしちゃったのよね」

ちょっとなんて事言うのこのばあさん…。
絶賛いまインプラント中なんですけどお?
あからさまに引きつった顔をしていると、そのおばあさんは笑いながら、さらに話し続ける。

「大丈夫大丈夫。じいさんばあさんになればもっと見えなくなるから。
 わたしもだいぶ眼が悪くなってしまってね。
 あなたがいつも同じ服じゃなかったら、同じ人かなんてわからなかったかもしれないわ」

ん?元気づけるに見せかけて、貶されてね?
というか元気づけれてもなくない?

うーん、元気なばあさんだな……。

「ナカムラさん。ナカムラさん。診察の準備が整いましたので5番診察室までお越しください」

呼び出しのアナウンスがなると、その元気なおばあさんが反応する。

「あら、やっとね。じゃあありがとね」

特になにもしてはいない僕にお礼をいうと、ばあさんは診察室に消えていった。

それから五分後くらいだろうか、僕も呼び出しを受け、3番診察室へと入った。

そこで、いつもの先生とのいつものやりとりの後、
両目の完治を告げられ、手術の日取りを決めた。

「完治、おめでとう。予定よりもだいぶ早かったね」

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